大型台風が過ぎ去った翌日、一年生の
息子は学校の遠足でした。
その前の週末に一緒におやつを選び、
荷物も早めに準備して、前日には
「早く明日にならないかなぁ」と
本当に楽しみにしていた初めての遠足。
どうだったかな?楽しめたかな?
電車で騒がなかっただろうか。
遠足の後に学童だったから、きっと
疲れてるだろうな・・。
そんなふうに息子のことを考えながら
急いだ会社からの帰り道。
でもひとつだけ気掛かりなことがありました。
うちの息子、本当に忘れ物が多くて
担任の先生にも注意されています。
最近はせっかくやった宿題を出し忘れ、
家からの連絡事を書いた連絡帳を出し忘れ、
それがあまりにも続くので、
これじゃあ先生に何も伝わらないと
何度も何度も注意していました。
遠足の日も、朝から何度も言ってきかせ、
「このノート、ちゃんと先生に渡してね」と
繰り返し伝えていました。
今日こそちゃんと先生に渡しただろうか・・
それが気になっていたのです。
だから帰宅しての第一声は
「遠足どうだった?楽しかった?
で、連絡帳は出した?」
すると息子がもぞもぞと、お弁当箱を
出してきました。よく見ると、空っぽになった
お弁当箱にぺたりとメモが貼られています。
「ごちそうさま」
ものすごく嬉しかったんです。
普段お弁当を残しがちの息子が
お弁当箱を空っぽにして、
「全部食べたよ」「ありがとう」の
言葉の代わりに貼ってくれたメモ。
本当に、涙が出るほど嬉しかった。
でも、その後息子の口から
「連絡帳、忘れた」と聞いて、
そのメモの存在が
私の中で吹き飛んでしまいました。
「ありがとう」
「動物園どうだった?」
「電車ちゃんと乗れた?」
「お弁当美味しかった?」
「ほけん係の仕事はちゃんと出来た?」
言いたいことも聞きたいことも
いっぱいいっぱいあったのに、
私の口をついて出たのは、怒りの
言葉だけでした。
「どうして!?どうして忘れるの!?
みんなはちゃんと出してるでしょ?
どうしてそれが出来ないの!!」
「もうちゃんと先生に出せるようになるまで
ゲームもテレビも禁止!」
そう言ってゲームを取り上げ、テレビを
消したら悲しそうに頷いて、
今にも泣きそうにしていました。
「もういいから、サッサとお風呂入ってきなさい!」
本当は、ゆっくりさせてあげようと思ったのに。
疲れているだろう、楽しかった話をいっぱい
聞いて、早めに寝かせてあげよう。
そう思ったのに。
怒りたくないのに。
そう思ってふと手元を見れば、
私は「ごちそうさま」の貼られたお弁当箱を
持ったままでした。
きっと息子は誉めてもらおうと思って、
喜んでもらおうと思って、
一生懸命考えて書いたに違いない。
その気持ちが突き落とされたのだから
どれほどショックだったことだろう。
息子の字を見つめていたら、
「ごちそうさま」って、こんな温かい言葉
だったかと、涙まで出てきました。
こんな日くらい、怒らずに我慢すれば
よかったのかもしれない。
でも私にはそれが出来なかった。
その気持ちをおさえて誉めることが出来なかった。
精神的な未熟さに、自分が情けなくなりました。
子ども達がお風呂に入っている時、
自分なりに心を落ち着けて反省していたら
お風呂から出た息子が謝ってきました。
「かあちゃん、連絡帳わすれてごめんね。」
負けですね、完全に。
素直に相手を思う気持ち、完全に息子に負けている。
母ちゃんこそ、ごめんね。
お弁当全部食べてくれてありがとう。
動物園はどうだったの?
ひよこ抱っこしてきた?
おやつたくさん食べた?
・・息子を抱っこしながら順序もバラバラに
問いかけて、息子の話をたくさん聞きました。
そして最後の最後に、
「明日は連絡帳、頑張ろうね」と
加えたのでした。
「ごちそうさま」って、温かい言葉です。
主婦にとって母にとって、子どもからの
こんなに嬉しい手紙は他にない。
忘れ物が多いことが、子どもの成長に
どれだけの影響を与えるのか。
そんなことより、温かい言葉を持っている、
素直に相手に伝えることが出来る、
そのことのほうがよっぽど大事。
心優しく、まっすぐに
成長している証拠なのだから。
息子よ、ありがとね。
母ちゃんも、頑張るね。
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