おいしい台所

ほどほど家事で、おいしい暮らしを。きょうも台所にいます。

ワラの匂い~松野屋のワラ鍋敷き

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先月実家に帰ったとき、実家の周りにある

田んぼでは調度稲刈りを終えたところで

あちこちにワラが束ねられていました。

 

実りの秋。この光景を見ると、

田んぼに走って行って、両手一杯に

ワラを抱えたくなります。

 

 

 

私が小学校低学年まで住んでいたところでは

近くに大きな空地があって、その周囲を

ぐるりと田んぼが囲んでいました。

 

田んぼの周囲には小さな川が流れていて、

春になればカエルの卵を、夏にはカマキリを、

秋にはイナゴを追いかけて、

一日中田んぼの周りで遊んでいました。

 

中でも一番楽しかったのは、稲刈り後の田んぼ。

山積みになったワラを両手一杯に抱え、

四角く仕切りを作って重ねて、お家ごっこをするのです。

 

「ここがわたしのおへやね。」

「ここが、おべんじょね。」

 

なんて言いながら、幼馴染のお友達と

ワラにまみれて日暮れまで遊びました。

ワラの匂いが大好きで、湿ったワラでも

お構いなしに抱えていたので、帰る時には

服も体も泥だらけ。

 

それでもちっとも母は怒らなかったっけ。

 

 

そんな思い出があるから、今でも

田んぼのワラを見ると、何やらうずうず

してしまうんですね。

 

 

 

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だから、というわけではないのですが、

この鍋敷きが大好きで、鍋敷きならば

木のものも布のものもいくつか持っているのに

いつも手に取ってしまいます。

 

そう、この鍋敷きワラで出来ているんですよ。

 

 

この鍋敷きは「ワラ釜敷き」と呼ばれるもので、

新潟県佐渡島で、お米を取った後のワラで

作られています。

職人さんが自分の手足を使って作った

この釜敷き、いくつかの工程に分けてしっかり、

きっちりと編み上げられており、網目は美しいし

本当に丈夫なんです。

 

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触ると、あのふわっとしたワラが想像

出来ないくらい固く、鉄瓶でも土鍋でも

どっしりと受け止めてくれます。

なのに素朴で可愛い。

 

稲ワラが、こんな素敵なものに変身するなんて。

職人さんてすごいなと思います。

 

 

東京は日暮里の、松野屋さんで買いました。

買ってからずいぶん経つので、もうさすがに

しないかなーと思いつつ、鼻に近づけてみました。

鍋の鉄っぽい匂いにまじって、ちゃんとワラの

匂いがしましたよ。

 

 

 

そういえば今頃、実家の周りの稲ワラは

何度かの雨と日差しをあびて

独特の湿った匂いをさせているんだろうな。

 

 

 

あの懐かしい匂いを。