おいしい台所

ほどほど家事で、おいしい暮らしを。きょうも台所にいます。

母の日なんて、なくていい

 

小さい頃、母の日が嫌いでした。

 

母の日、私の母はいつも機嫌が悪く、朝から普通に家事をしているだけなのにイライラしていて「どうして母の日なのに誰も何もしてくれないの」という言葉が体中から溢れていました。母のことは大好きでいつも感謝していましたが、言葉にするのはどうしても照れくさくて「ありがとう」という言葉が言えなかった私は、「母の日」という力を借りてもやっぱりうまく伝えることが出来ませんでした。母にそんな態度をされるとなおさら「ありがとう」の言葉がしぼんでしまい、ぷりぷりする母を見ながら「どうしていつも感謝しているのに伝わらないんだろう。」「どうしていちいち言葉にしたり、モノをあげなくちゃならないんだろう」と悲しく思っていました。母の日のためにエプロンや、花、服など買ってきたり、一緒に買いに行ったりもしましたが、母の心からの嬉しそうな顔は、母の日にはあまり見なかったなと思います。小さい頃の私は、そんな母のことを理解出来ずにいました。

 

でも、大人になって自分が母になった今、あの時の母の気持ちがようやくわかるようになりました。

 


母の日が近くなると、ケーキ屋さんのウインドウの中はカーネーションの造花で飾られて「お母さんありがとう」のプレートがつけられるし、服も雑貨も「母の日のプレゼントに!」というPOPが貼られ、テレビのCMにも、新聞のちらしにも「母の日」を意識した広告が増えてきます。母の日商戦なのだから当たり前なのですが、これって母本人は誰より一番目に入ってくるものです。これ、私は結構ストレスに感じます。「世のお母さんはみんなそんなふうに母の日にプレゼントをもらったり、家電を新しくしてもらったり、ケーキを買ってきてもらったり、ディナーに連れて行ってもらったり、子どもに食事を作ってもらったり・・そんなふうに大事に、大事にされている。」知らず知らずのうちにそう頭に刷り込まれ、自分はどうなんだろうと考えて不安になったり、悲しくなってしまうからです。


実際は、もちろんそんなふうに大事にされるお母さんも居るとは思いますが、「何-んにもないよ」というお母さんもたくさんいるはずなのです。それに母の日じゃなくても、普段から「お母さん」として頼りにされていること、感謝されていることはわかっているのだから、そもそも母の日にわざわざ何かしてもらう必要はないのです。

 

 

今日、こんなことがありました。

 

私は午前中に子供会のソフトボールのお手伝いがあり、朝早くからお昼まで家を留守にしていました。肌寒い一日だったので、冷える中お茶を出したりコップを洗ったり、立ちっぱなしで結構大変でした。そして家に帰って一息ついた時、娘から「ねぇ、お昼ごはんは?早く食べさせてよ」とイライラした調子で何度も言われて、キレてしまったのです。「そんなに食べたいなら自分でやりなさいよ。おかず温めたりご飯炊くくらいもう出来るでしょう。大体どうして母の日なのにそんな風に言われなくちゃいけないの。どうしてこんな日まで何でも私がやらなきゃならないの」と夫と娘に。

 

言ってしまって気付きました。ああこれ、小さい頃に見た母と一緒だなぁと。おんなじことしてるなぁと。

 

 

そんなこと言いたい訳じゃなくて、母の日だからみんなで美味しいもの食べに行こうよとか、スーパー銭湯でも行こうかとか、みんなで食べられるケーキを買おうよとか、本当はそんなことを言いたかったのに。


感謝されていることはわかっているし、私に内緒でケーキを準備しようとしていたことも知っているし、お腹が空いていればイライラするのは当たり前で、家族は何も変わっていない。「母の日」は母は何もしなくていいわけじゃない。「母の日」だというだけで、勝手に気持ちを沈ませているのは私です。

 

自分が情けなくなりました。

「母の日」なんて、本当はなくたっていい日。わかっているくせに。

 

 

 

気まずい気持ちのまま午後買い物へ行きました。

混雑するケーキ屋さんをすり抜けて私が選んだのは、

 


トップスのチョコレートケーキ。

 

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生クリーム嫌いの娘でも一緒に食べられるケーキ。「母の日」向けのケーキを売るケーキ屋さんは長蛇の列で、そっちを覚悟していた夫は「これでいいの?」と不思議そうに聞いてきました。

 

いいのいいの。これがよかったの。大好きなの。みんなで、一緒に食べよう。

 

 

私は母としてまだまだ未熟です。

こんな私を「母」として認めてくれて、ありがとう。

ちゃんと伝えられていないのは、私のほうかもしれません。

 

 

そんな母の日でした。

 

 

 

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